PAYMENT RISK LAB ── 止まる決済の記録と、止まらない決済の一次情報

決済を止められた後に、暗号資産で受け取った海外の事例 ── 販売 3 件・寄付 5 件

最終確認 2026-10-22

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国際ブランド(Visa・Mastercard などカードの仕組みを運営する会社)や決済代行などに決済を止められた後に、暗号資産で代金や寄付を受け取った海外の事例を並べます。止められたことと、その後に暗号資産で受け取ったことの両方を、当事者の告知、Web アーカイブに残る当事者のページ、報道のどれかで確かめられたものだけを載せています。最初の 6 件の出典は 2026 年 10 月 6 日に、あとから足した 2 件(Meduza・GrapheneOS)の出典は 10 月 22 日に取り直しました。販売の事例が 3 件、寄付の事例が 5 件です。特定の手段やサービスを推奨しません。

先に 3 つ

  • 止めた側は、国際ブランドだけではありません。 8 件の中には、Visa・Mastercard のほか、PayPal、Stripe、カードの決済代行、暗号資産の決済代行が止めた例があります。ほかに、決済代行の寄付のリンクと銀行口座が止まった例があります(Feminist Coalition。Flutterwave は保守のためと説明)。
  • 受け取り方は、分かった 7 件で 4 通りでした。 受け取り用のアドレスを公開して直接受ける形(WikiLeaks の寄付・Feminist Coalition・Meduza・GrapheneOS)、利用者のアカウントごとに決まった入金用のアドレスに送ってもらう形(Civitai。2026 年 4 月 1 日に更新した今の手引きの形)、暗号資産の決済代行を通す形(iPredator・Hong Kong Free Press の初め)、自前のサーバや公開のソフトウェアの仕組みで受ける形(Feminist Coalition・Hong Kong Free Press の後)です。Civitai には Coinbase Commerce との連携で払う方法もありましたが、2026 年 4 月 1 日の更新で使えなくなったと書いています。
  • 暗号資産の決済代行も、止めることがあります。 Hong Kong Free Press は、暗号資産の決済代行が寄付を送らなかったとして暗号資産の寄付をいったん止め、公開のソフトウェアの仕組みに切り替えて再開しました。当観測所が観測している 8 社も、規約で口座を止められると書いています(暗号資産で代金を受け取る時に起きること の 6 節)。

一覧

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事例種類止められた時期止めた側と止まったもの暗号資産で受け取った時期と形
Civitai(生成 AI のサイト)
販売(サイト内の通貨・会員)
2025-05
カードの決済代行
2025-05-22 に暗号資産で買う手引きを公開
Pornhub(成人向けの動画サイト)
販売(有料会員)
2020-12
Mastercard・Visa
2020-12-15 の報道で、複数の国で有料会員の支払いが暗号資産だけに
iPredator(スウェーデンの VPN)
販売(VPN の利用料)
2013-07
カードの決済代行(Payson)・PayPal
2013-08-07 の写しで、BTC を暗号資産の決済代行で自動処理
GrapheneOS Foundation(カナダの非営利団体)
寄付
2023-07
PayPal が寄付用のアカウントを閉じる(団体の説明。団体は暗号資産の寄付を受けているためと見ている)
2023-07-27 の記事に BTC の寄付の案内。2026-10-22 の団体のページに BTC・Monero ほか
Meduza(ラトビアのリガに置くロシア語の報道機関)
寄付
2022-03
ロシアの読者のカードが通らなくなる。Stripe が制裁に従ってロシアでの取り扱いを止めたと報道(Meduza を名指しした停止ではない)
2022-03-01 の告知に暗号資産での受け付け。2022-05-11 の報道で BTC・ETH・USDT・XMR など
Feminist Coalition(ナイジェリアの市民団体)
寄付
2020-10
決済代行(Flutterwave)の寄付のリンクが止まる(Flutterwave は保守と説明)・団体の銀行口座が 2 時間止まる(関係者の話)
2020-10-15 の報告に BTC での寄付。自前のサーバと公開のアドレス
Hong Kong Free Press(香港の報道機関)
寄付
2019-09
暗号資産の決済代行(BitPay)
2019-10 に公開のソフトウェアの仕組みで再開
WikiLeaks
寄付
2010-12
PayPal・Visa・Mastercard ほか
2011-06-17 の写しで、寄付のページに BTC のアドレス

販売の事例

Civitai(2025 年)

生成 AI のサイト Civitai は、サイト内の通貨(Buzz)と会員を売っています。2025 年 5 月 20 日の公式の告知で、カードの決済代行が 5 月 23 日に取り扱いを止めると知らせ、22 日の追記で、決済代行が予告なく 1 日早く手を引き、カードで払えなくなったと書きました。理由について Civitai は、一部の決済会社が生成 AI のサイトを高リスクと分類しており、利用者の成人向けの投稿を認めている場合は特にそうだと説明しています。

同じ告知は、暗号資産での支払いを今週中に始める予定としていました。暗号資産で Buzz を買う手引きの初版は 5 月 22 日です。手引きは 2026 年 4 月 1 日の更新で、Coinbase Commerce を通す支払いが使えなくなったと書き、アカウントごとに決まった入金用のアドレスに送る方法はそれまでどおり使えるとしています。会員を暗号資産で買う方法は、新しい仕組みを準備中としています。

Pornhub(2020 年)

2020 年 12 月、Mastercard と Visa が、成人向けの動画サイト Pornhub での取り扱いを止めました(fintech.global の 12 月 11 日の記事)。Mastercard は、違法な内容を禁じる自社の基準への違反を確かめたとし、サイトと自社のネットワークをつなぐ金融機関に取り扱いの終了を指示したと説明しています。当観測所の記録は PRL-2020-001 です。

暗号資産の専門媒体 CryptoPotato は 12 月 15 日、Pornhub の有料会員(Premium)の支払い方法が、複数の国で暗号資産だけになっていることを確かめたと報じました。挙げた通貨は BTC・ETH・XMR・USDT など 14 種類です。同じ記事は、SNS には、暗号資産は既定の選択肢で、唯一ではないとする声もあると書いています。

iPredator(2013 年)

iPredator は、スウェーデンの VPN(通信を別のサーバに通して接続元を隠すサービス)で、2013 年には利用料を前払いで受け取っていました。TorrentFreak の 2013 年 7 月 24 日の記事によると、その 3 週間ほど前にカードの決済代行 Payson が規約を変えて VPN を扱わなくなり、続いて PayPal が支払いの受け付けを止め、資金を最大 180 日凍結しました。記事は、残る支払い方法に BTC があると書いています。

iPredator の支払いのページは、2013 年 5 月 23 日の写しでは、BTC はページに載せたアドレスに送り、取引の ID をメールで知らせる形でした。8 月 7 日の写しでは、BTC を暗号資産の決済代行 BitPay で自動で処理していると書いています。

寄付の事例

GrapheneOS Foundation(2023 年)

GrapheneOS Foundation は、公開のソフトウェア(オープンソース)GrapheneOS を支える、カナダの連邦法で設立された非営利団体です。No Bullshit Bitcoin の 2023 年 7 月 27 日の記事は、団体の言葉として、PayPal が団体のアカウントを完全に閉じた(permanently locked)と伝えています。団体は、理由の説明はなかったと書いています。団体によると、そのアカウントで受けた寄付は 3,950.75 カナダドル(約 3,000 米ドル)でした。団体は、暗号資産(Monero を含む)の寄付を受けているために閉じられたと見ています。PayPal 側の説明は、この記事にはありません。

同じ記事は、BTC で寄付できると案内しています。団体の今の寄付のページ(2026 年 10 月 22 日確認)には、BTC・Monero・Zcash・Ethereum・Cardano・Litecoin の受け取り先が並び、PayPal も寄付の手段に載っています。PayPal が閉じたアカウントを戻したのかは確かめていません。

Meduza(2022 年)

Meduza は、ラトビアのリガに置くロシア語の報道機関です(Bitcoin.com の 2022 年 5 月 11 日の記事)。2022 年 3 月 1 日の読者向けの告知で、寄付の 9 割が Stripe と PayPal を通っており、ロシアの読者のカードが拒否されていると書きました。ロシアの金融への経済制裁が資金集めに重い危険をもたらすとも書いています。同じ告知は、寄付の方法に、銀行振込、暗号資産、Stripe と PayPal を挙げています。

Bitcoin.com は、制裁に従って Stripe がロシアでの取り扱いを止めたため、ロシアの読者が Stripe を通して送れなくなったと書いています。止まったのは国ごとの取り扱いで、Meduza を名指しして止めたものではありません。同じ記事は、Meduza が BTC・ETH・USDT・XMR などで寄付を受けていて、公開している BTC と ETH のウォレットに約 23 万ドル分がたまったという報告を伝えています(記事の見出しは「20 万ドル超」)。同じ記事は、編集長が、暗号資産を募っており、外国の人たちのお金だけに頼るのは初めて、と述べたと伝えています。

Feminist Coalition(2020 年)

ナイジェリアの Feminist Coalition は、2020 年 10 月、警察の特別部隊(SARS)への抗議を支える寄付を集めていました。決済代行の Flutterwave の寄付のリンクは 10 月 13 日に止まり、Flutterwave は保守のためと説明しています。リンクが止まっていた間に、団体の銀行口座が何の理由もなく 2 時間止められたと、関係者の話として報じられています(The Condia の 10 月 14 日の記事)。Tech.Africa の 10 月 18 日の記事は、団体が銀行口座と寄付のリンクが使えなくなったと告知し、その後に BTC の受け取り用のアドレスを用意したと書いています。

10 月 15 日付けの団体の報告では、集まった寄付の中に BTC 1.28827988 があります。2021 年 3 月 12 日の団体の声明によると、団体は BTC 7.21958757 を 2020 年 11 月 16 日と 29 日の 2 回に分けて売り、その代金 5,759 万ナイラを 11 月 16 日から 12 月 1 日までの間に受け取りました。声明は、売った BTC を自前のサーバと公開のアドレスの 2 か所から送ったと書き、自前のサーバを通して寄付した人のアドレスは公開しないとしています。

Hong Kong Free Press(2019 年)

香港の報道機関 Hong Kong Free Press(HKFP)は、2019 年 8 月、暗号資産の決済代行 BitPay を通して、BTC と BCH の寄付を受け始めました(Decrypt の 8 月 17 日の記事)。HKFP の編集長は 2019 年 9 月、BitPay が受け取った寄付を 1 か月近く送らず、香港の銀行が IBAN(国際的な口座番号の形式)に対応していないことを理由に処理を断ったとして、暗号資産の寄付をいったん止めると告知しました(Bitcoin Magazine の 10 月 11 日の記事。9 月であることは、同じ日の Bitcoinist の記事が「先月」と書いていることによる)。

HKFP は 2019 年 10 月、公開のソフトウェア(オープンソース)の受け取りの仕組みに切り替えて、暗号資産の寄付の受け付けを再開しました(Bitcoin Magazine・Bitcoinist の 10 月 11 日の記事)。Bitcoin Magazine によると、HKFP の告知は、処理の手数料がなくなり、寄付する人が名前を出さずに寄付できると書いています。

WikiLeaks(2010〜2011 年)

WikiLeaks の 2011 年 10 月 24 日の告知によると、2010 年 12 月 3 日に PayPal が、12 月 7 日に Visa と Mastercard が、WikiLeaks への支払いの取り扱いを止めました。告知は、Bank of America と Western Union も加わったこの封鎖で、収入の 95% を失ったと書いています。

寄付のページの Web アーカイブの写しを比べると、2011 年 5 月 27 日の写しには BTC がなく、6 月 17 日の写しには BTC の寄付のアドレスが載っています。今の寄付のページ(2026 年 10 月 6 日確認)は、財団を通すカードと PayPal に並べて、暗号資産 6 種類を挙げています。

載せた基準

  • 決済を止められた後に、暗号資産で代金か寄付を受け取ったこと。止められる前から暗号資産を受けていた例(iPredator・GrapheneOS)も、止められた後に受け取っていれば載せています
  • 止められたことと受け取ったことの両方を、当事者の告知、Web アーカイブに残る当事者のページ、報道のどれかで確かめられたこと
  • 販売の事例は、サイト内の通貨・会員・利用料の販売です。2026 年 10 月 6 日の調べでは、物を売る店の事例は見つけられていません

日本の事業者が暗号資産で代金を受け取る時に何が起きるかは 暗号資産で代金を受け取る時に起きること、どの法律がどう関わるかは 暗号資産を自社で受け取る ── 日本の法的地位と税務 にまとめています。

出典

最初の 6 件(Civitai・Pornhub・iPredator・Feminist Coalition・Hong Kong Free Press・WikiLeaks の寄付)は 2026 年 10 月 6 日に、Meduza・GrapheneOS は 2026 年 10 月 22 日に取得し、写しを当観測所で保存しています。