PAYMENT RISK LAB ── 止まる決済の記録と、止まらない決済の一次情報

決済を止める告知は、理由をどう書いているか ── 28 件の文面を 5 つの型に分ける

カード決済が止まる時、事業者は告知を出します。その告知が「なぜ止まるのか」をどう書いているかを、当観測所の記録で数えました。

対象は、日本の事業者・サービスについての「止める・絞る」記録 37 件です(2026年10月16日時点)。このうち、事業者自身の告知の言葉が記録に入っている 28 件を、理由の書き方で 5 つの型に分けました。残りは、銀行が当事者に返した言葉の 4 件と、告知の言葉がまだ記録に入っていない 5 件です。

自社の告知を書く立場の事業者と、取引先や同業の告知を読む立場の事業者に向けて書いています。

5 つの型

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型件数その後の状態書き方
① 理由を書かない
9
継続中 9
何が、いつから使えなくなるかだけを書く
② ぼかした言葉で書く
5
継続中 2・一部解除 3
理由に触れるが、中身は書かない
③ 連絡してきた相手を書く
7
解除済み 4・一部解除 2・継続中 1
決済代行・カード会社・関係機関から、連絡や指定があったと書く
④ システム・メンテナンスと書く
3
解除済み 2・一部解除 1
障害や保守として書く
⑤ 起きた出来事を書く
4
継続中 3・解除済み 1
不正アクセス、破産、提供元の撤退など、出来事そのものを書く

表1 ── 日本の事業者の告知 28 件の、理由の書き方と件数。状態は2026年10月16日時点の記録の値。型は当観測所の分け方で、型と状態の間に因果があるとは言えない

① 理由を書かない(9 件)

例: 「2024年6月14日(金)12時よりFANZA同人でのVisa決済を一時停止しております」(PRL-2024-004)

DLsite(PRL-2024-001)、Fantia(PRL-2024-002)、FANZA同人(PRL-2024-004)、とらのあな(PRL-2024-005)、Ci-en(PRL-2024-018)、ポケットドラマCD(PRL-2025-011)、ゆずソフト(PRL-2025-014)、ジュエルライブ(PRL-2026-011)、マダムライブ(PRL-2026-012)です。

9 件とも継続中です。

② ぼかした言葉で書く(5 件)

ニコニコ(PRL-2024-003)、ピンクパイナップル(PRL-2024-013)、U-NEXT(PRL-2024-014)は「諸般の事情により」と書いています。Komiflo(PRL-2025-015)は「当社の管理外の事情」と書いています。メロンブックス(PRL-2024-006)は、2024年11月8日の予告で「力及ばず」と書きました。

5 件のうち、継続中は 2 件、一部解除は 3 件です。

③ 連絡してきた相手を書く(7 件)

例: 「この度、決済代行会社より、クレジットカード決済のうちVISAおよびMASTERカードブランドが使用不可となるとの連絡がありました」(PRL-2024-010)

マンガ図書館Z(PRL-2024-007)、pictSPACE/pictSQUARE(PRL-2024-010)、アエルネ(PRL-2024-011)、DL.Getchu.com(PRL-2024-023)、競馬道OnLine(PRL-2024-025・PRL-2025-016)、Fantia(PRL-2026-003)です。

相手の呼び方は、告知によって違います。「決済代行会社」「クレジット決済サービス会社」「関係諸機関」などです。告知の言葉だけでは、止める判断をしたのが誰かは決まりません(「カード会社からの要請」を読む の確認点 1)。

相手の理由まで書いたのは 3 件です。マンガ図書館Z は、決済代行会社から、アダルトコンテンツの取り扱いを理由に契約解除の通達を受けたと書きました(要旨)。DL.Getchu.com は、カード会社から指定されているNGワードがあると書きました。Fantia は、関係諸機関から「法的な観点から極めて厳格な指導・指摘を受けている」と書きました。

④ システム・メンテナンスと書く(3 件)

例: 「現在、VISA・MASTER決済が決済代行会社様のシステム障害にて決済が出来なくなっております。」(PRL-2025-019)

DL.Getchu.com は、2024年10月の告知で、決済代行会社のシステム上の問題によると書きました(PRL-2024-024)。Visa は2024年10月7日に止まり、最初の再開は2025年4月1日で、176 日後でした。翌日にまた止まり、続けて使えるようになったのは2025年4月23日(198 日後)です。2025年6月18日の告知は「決済代行会社様のシステム障害にて」と書き(PRL-2025-019)、Visa の再開は2026年7月9日で、この告知の日から数えて 386 日後でした(PRL-2026-015)。Mastercard は2025年7月1日から7月9日までの間だけ使えました。

駿河屋は、2025年6月5日の告知で「2025年5月下旬からメンテナンスにより一時的にご利用いただけなかったクレジットカード決済」と書きました(PRL-2025-012)。この日に再開したのは JCB・Amex・Diners です。

⑤ 起きた出来事を書く(4 件)

駿河屋は、不正アクセスによるカード情報の漏えいを理由に、2025年8月8日からカード決済を止めたと書きました(PRL-2025-013)。全東信の破産管財人は、破産手続の開始により決済代行のサービスを中止すると書きました(PRL-2026-005)。CrossFactor は「決済ライン提供元の会社が日本から撤退したため」と書きました(PRL-2025-017)。マンガ図書館Z は、決済手段を失ったためサイトのサービスを止めると書きました(PRL-2024-008・要旨)。

銀行が当事者に返した言葉(4 件)

2026年の 4 件は、銀行の告知ではありません。海外からの売上の送金を受け取れなかった当事者が、銀行の言葉を公開したものです。

りそな銀行は、書面で「総合的な判断により今回は当該口座への入金を見送る」と答えました(PRL-2026-006)。記録では、楽天銀行は理由を答えていません(PRL-2026-008)。新生銀行は、電話で理由を伝えました(PRL-2026-009)。ゆうちょ銀行は、理由を公開しませんでした(PRL-2026-010)。楽天銀行・新生銀行・ゆうちょ銀行の 3 件は、本人の投稿によります。

4 件とも継続中です。

所長より

私はこう考える。

理由を書かない告知と、ぼかした言葉で書く告知は、合わせて 14 件あります。このうち解除済みは 1 件もありません。書き方と、戻らないこととの間に、因果があるとは言えません。理由を書けない告知は、事業者が自分では動かせない事情の中にいることの表れだと、私は読んでいます。

「システム障害」と書かれた Visa の停止が、386 日続いた例があります。告知の言葉から、止まる長さは読めません。

告知を書く側になった時、理由が書けなくても、読む人が動くための 3 つは書けます。対象のブランドと範囲、いつからか、代わりに使える手段です。記録の中でも、DL.Getchu.com(PRL-2025-019)、U-NEXT(PRL-2024-014)、ジュエルライブ(PRL-2026-011)などの告知は、代わりに使える手段を書いています。ピンクパイナップル(PRL-2024-013)の告知は、ほかの決済への切替を案内しています。

この集計について

  • 対象は、当観測所のトラッカーの記録のうち、日本の事業者・サービスについて、決済の停止・一時停止・制限の強化・事前の告知を記録したもの 37 件です。再開と手段の追加の記録は含めていません。他の記録に統合した記録(1 件)は数えていません。
  • 型は、記録にある告知の言葉で分けました。同じ事業者の告知が複数ある時は、記録ごとに数えています(DL.Getchu.com は 3 件、競馬道OnLine は 2 件、駿河屋は 2 件、マンガ図書館Z は 2 件、Fantia は 2 件)。
  • 要旨で記録しているもの(マンガ図書館Z)は、要旨の言葉で分けました。
  • 告知の言葉が記録に入っていない 5 件は、DMM.com(PRL-2022-001)、FC2(PRL-2022-003)、pixiv(PRL-2023-001)、ポケットドラマCD(PRL-2024-009)、CLUB NEXTON(PRL-2024-015)です。
  • 記録のデータは CC BY 4.0 で公開しています。

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